松山ケンイチの言葉を解説しましょう。
『自分にとっては当たり前。だけど、世間はそうでもない。』
ブログの鉄板ネタの真髄を、簡単に言うならこういうことだと思います。
先日、松山ケンイチが出演した「しゃべくり007」が面白かったと話題になっているそうです。
まさにこれだと、ハッとしたんです。
私にとって、当たり前は松山ケンイチの「青森弁」でした。
自分では当たり前だと思っていても、みんなはそうでもない、そこにつくのはちょっと恥ずかしい。
油断していました。私にとって、松山ケンイチの訛りは地元の友だちを見ているようで恥ずかしい。
彼の言動には親近感を覚えすぎて、自分の中では目新しさ皆無だったのです。
むしろDAIGOに気を取られていました。ブログ運営としては大失敗です。
みんな心のセンサーに引っ掛かったのはマツケン(の若い方)だったらしい。
手遅れだと諦めずに書いてやりますよ。
もう一度言います。私は松山ケンイチがテレビでしゃべっているのを聞くと恥ずかしくなってしまいます。
「訛ってる!ぷぷー!」
というやつです。
ミュージックステーションの青春の思い出ランキングで、プリンセスプリンセスのダイヤモンドが流れる時に似た恥ずかしさです。悶えます。
ところで、ところでというか大事なところなのですが私は北海道の南方面の出身です。
北海道の南方面「渡島地区」は、だいたい青森と言葉が一緒です。
松山ケンイチは地元の友だちを見ているようで、「背筋が凍る」恥ずかしさを覚えます。
でもそれがだんだん癖になってゆく・・・。
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こごおがしじゃよ東京!から青森弁を解説
松山ケンイチが東京でおかしいと思っていることに関して、方言を使って怒りをぶつける、というコーナーがありました。
今回は、ここに出てきた方言を取り上げながら、より汎用性のある青森弁講座を展開したいと思います。
松ケンを理解するには、「だいたい青森」で十分
解説の前に、松山ケンイチの出身は陸奥市です。
トキオの番組に出た時に、青森弁は、下北弁、津軽弁、南部弁の3つに分かれていて、松山ケンイチは下北弁である、とかなんとか言われていましたが、あまり拘る必要はありません。
だいたい一緒です。北海道の出身の私が、青森の老人の津軽弁を字幕なしでほぼ理解出来ているので、間違いないと思います。
参考になる映画
函館を舞台にした映画です。登場人物のイントネーションはまさしく松山ケンイチのそれです。
池脇千鶴も、綾野剛も上手ですが、中でも助演の菅田将輝がかなり上手い。
私は観ていて笑いが止まらず、話が頭に入ってきませんでした。
函館方面、および青森都市部、岩手県三陸周辺の人々はだいたいこんな話し方だという理解で間違いないでしょう。
たとえ違ったとしてもここをクリアすれば、ぐっと理解しやすくなります。
東北弁なんてねえだろ
もうひとつ、私は「東北弁」なんてものはないと思っています。
みんな、いったいどれを東北弁と思っているのか、謎です。東北6県の方言には、良くも悪くも関西弁ほど体系的な統一感はないのです。
各県の人々がそれぞれ、互いに「あいつ何言ってるかわかんない!ははは!」とバカにし合っている状態です。
これだけは是非言いたかった。
1.喫茶店でひとりひとっつ頼まばねっておがしべな
一瞬、BGMに吉幾三の傑作「オラ東京さ行ぐだ」が流れます。
東京の喫茶店では1人1つ何か注文しなければいけないのが納得いかない松山ケンイチ。
いや、それはどうでもいいのです。
問題は、青森弁の解説です。
喫茶店でひとりひとっつ頼まばねっておがしべな!
喫茶店で・ひとり・ひとっつ・たのま・ねば・って・おがし・べ・な
引っ掛かるのは、
「ひとっつ」
「頼まねば」
「べな」
でしょう。
「ひとっつ」
は、ただ単に跳ねてるだけですね。特に意味はない。人によっては跳ねません。あまり拘るところではありません。
「頼まねば」
これは「やらねば」と一緒です。
「ねば」は打消しの助動詞「ぬ」の仮定形+助詞「ば」です。
打ち消しですから、未然形について「やらねば」となります。
「頼まぬ」が「頼まねば」になっているだけです。
「べな」
「べ」は「べ」 「なんとかだっぺ」と一緒。
「な」も一緒です。
なんとかだ「ぴょん」と言っているのと同じです。
この変に躓くと、余計なことを考えてしまい理解が遅くなります。初めの内は無視しましょう。
訳:喫茶店で1人1つ頼まなければいけないっておかしいでしょう?
2.えぎの出はるどごいっぺありすぎだべな
えぎ・の・出・はる・どご・いっぺ・あり・すぎ・だべ・な
青森、東北一部、日本の海岸港町は、とにかく濁ります。濁点王国です。
ついでにアクセントを言うと、「え・ぎ」ではなく「え・ぎ」です。
くりーむしちゅー上田(熊本)は、徹底的にアクセントのない言い方で例文を読んでいました。
東北方面の方言にこういうイメージを持っている人は多い。志村けんの影響でしょうか。しかしよく見ると、志村けんはもっと上手にやっている。なぜこうなってしまったのか・・・。
さて、本題です。
引っ掛かるのは、
「出はる」
「いっぺ」
だと思います。
出「はる」
詳しくないので取り上げるのも憚られるのですが、京都方面の「~しはる」という言い方。
あれと一緒だと考えて下さい。
しかし、なんでもかんでも同じように「はる」をつけるわけではない。
特殊な例です。
「いっぺ」
⇒「いっぱい」が変化しています。「いっぱい」を極限まで早く言おうとした結果がこれです。
それだけです。
後半の「だべな」は、恒例の「ぴょん」です。
訳:(東京って)駅の出口が多過ぎだよね(で、意味がわからないよね)
3.しゃぶしゃぶ屋さ まんまねーってどんだのよ
しゃぶしゃぶ屋・さ・まんま・ねー・って・どんだのよ
訳:しゃぶしゃぶ屋さんに、ご飯がないなんて、一体どういうことなんだ!
青森方面の人は、なんでも「屋」をつけます。
店を「店屋」、ガソリンスタンドを「ガス屋」。そういう癖です。
引っ掛かるのは、
「さ」
「まんま」
「どんだのよ」
ですね。
「さ」は「に」です。
「どこに行くの?」は、「どこさ行く?」と言います。
「まんま」
⇒これはわかりますよね。ねこまんまのまんまです。ご飯。
やり過ぎな人は「まま」と言ったりします。
「どんだのよ」
⇒関西弁で言うところの「どないやねん」的な使い方です。
もっと汚い言い方で、「どんだんだば」などがあります。
基本はかさ増ししているだけ
分けて考えると分かりやすいですね。
とにかく、がちゃがちゃ付け足しているだけなんです。
青森弁を上手に聴くコツは、
- 「助詞」を覚える
- 語尾は無視
- 明確に分かる単語(標準語と同じもの)をきちんと拾う
これだけで随分敷居が下がります。
東日本、北日本の人間が、よしもと芸人の関西弁を理解できるのは、
微妙に違う助詞を理解し、
意味の理解に関してはどうでもいい言い回しをカットして、
聴けているからなのです。
それと一緒です。
その他、代表的な方言
- わ、わい⇒私。「おら(アクセントなし)」もあります。
- な⇒お前、あなた。「なあ」と伸ばして言うことも。
- け⇒「食べなさい」「食え」を早く言ってるだけです。
- かねんだが⇒「食べないの?」。「食わ」がスピードを追求した結果「か」になっています。「食わねえんだが?」←だが、が余計⇒「食わねえの?」⇒「かねーの?」
- く⇒「食う」の「う」を端折ってるだけです。
基本的に、標準語を圧縮しているだけです。何も難しいことはありません。
ばーか!⇒どんころくそこのなだばはぁほにまんずきまやげるでな!
というのもテレビで観ました。
これは、
- どんころくそ
- このなだば
- はぁ
- ほに
- まんず
- きまやげる
- でな
に分けて考えるべきです。
要は、「バカ」という意味合いの言葉をたくさん言っているだけです。
「バカ!アホ!ちんどん屋!お前のかーちゃんでーべそ」と一緒です。
どんころくそ
⇒どんころ・くそ。です。どんころは、丸太です。
どんくさいやつ、まぬけ、ということです。木偶の坊の変形だと思えばいいんじゃないでしょうか。
この な だば
⇒意味は、お前は本当に。です。「この野郎!お前ときたら本当に~だな!」の「~」以外の部分です。
まんず
⇒「まず」です。「まずありえない」の「まず」です。間に「ん」が入っちゃっただけ。
勢いつけてるだけですよ。
きまやげる
⇒「肝が焼ける」です。つまり「腸が煮えくり返る」と同じです。
私の地元では「きもやげる」と言います。おそらく、みんな滑舌が悪いので、「ま」なのか「も」なのかはっきりしていないのだと思います。
「でな」
⇒「だな」ということ。最後につけてるだけ。「~だぴょん」です。
まとめ
好きな人が何を言いたいのかわからない、これほど苦しいことはありません。
松山ケンイチファンのみなさま。
これであなたと松ケンの距離もぐっと縮まるでしょう。
琴線に触れる人は少ないかもしれませんが、個人的にはこちらもおすすめです。
(一緒にすると怒られる?)