「小諸そば」は立ち食いそば屋である。
数年前、ガテン系のアルバイトをしていたときの話。現場の近くに小諸そばがあったので、毎日お昼はそこで食べていた。
約半年間同じ現場で働き続けたので、小諸そばを啜り上げた回数も、汗を流したそれと同じである。つまり、文句なしの常連客であったということだ。
常連になるといっても、あくまでチェーン店だから何か人情味あふれるサービスがあったりなかったり、なかったりである。プラスの面よりも、むしろマイナス面が際立ってくるということをみなさんに紹介したいと思う。
小諸そばと言えば、大盛り30円の多段階、ネギ使いたい放題、梅干し食べ放題など、ささやかな特典がついてくるところが私にとっては大変嬉しい。
唯一の難点はBGMが歌謡曲のオルゴールバージョンな点で、私が行くといつも倖田來未のバラードが流れているのがもどかしい。食事に相応しいのかどうか、もう一度考え直して欲しい。(当時)
前回はこんな悲劇に遇いました。⇨小諸そば。注文ミスの悲劇
しかし、今回は私がやってしまった。そんな話。
食券じゃない、対面会計なんだ
繰り返しになるが、「小諸そば」は食券制ではなく、最初にレジで注文をしてから品を受け取る形式である(店によって違う)。
いつも決まって「ミニ丼+もりそば大」を頼むから、レジのおばちゃんもこちらが何も言わないのに「大盛りですね」と言ってくる。「もりそば・・・」と言えば「大盛り」。売り言葉に買い言葉。枕詞に体言止め、いわんやをや、に、であろうか。いや、ないのである。
通い始めて3日後には、私が「もりそ・・・」と言えば、自動的に「大盛り」が飛んできた。半年間の工事が終わる頃には「大盛り」は「二枚盛りの超大盛り」にまで進化していた。※二枚盛りの超大盛りは大盛り×4(+120円)
この私とおばちゃんの阿吽の呼吸がなんだかあまりいい気がしないのは不思議である。最後に「で」を付けられるのもだんだん腹が立ってくる。
今日も例によって「大盛りで」が炸裂した。「ちっ、また始まった・・・」と思いながらも注文を告げた。
また始まった・・・
などと、心の中で余計なことを考えたのがいけなかった。いつも通り食い気味で襲い掛かってくるおばちゃんに完全に気を取られ(何度やられても慣れない)、様々な思いが去来する。
私は急かされるのが好きではない。むしろ相手方にはモタっていてほしい。こっちはいくらでも待てるんだ・・・。昨日のかけそばもりそば食い違い事件のこと、一体俺はこの店でどんな扱いなんだろうか、アダ名はもう「大盛り」で確定だろうか、あるいは「タレ少なめ」だろうか・・・
そして私はそのまま支払いをせずに注文受け取りカウンターに進んだ。
www.jili.or.jp/kuraho/genso/web05/g_web05.html
おばちゃんのあの笑い顔は忘れられない。笑顔じゃなかった。笑っていた。
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なんの言い訳も出てこない。向こうも何も言わずにただ笑って待っている。
悔しい・・・。
小諸そばと私、2日に渡って展開した凡ミスと凡ミスのキャッチボール。
支払いを忘れた自分がだんだん面白くなってくる。ニヤニヤしている麺類は食べられない。思い出し笑いも、現在進行形も、止まらないものは止まらない。
まとめ
わさびを効かせてタレは少なめ、さきっちょにちょっとだけ。
【こちらもどうぞ】
⇨小諸そばの常連客になったせいで気まずく悔しい思いをした話。一杯目。