「小諸そば」は立ち食い蕎麦屋である。
数年前、ガテン系のアルバイトをしていたときの話。現場の近くに小諸そばがあったので、毎日お昼はそこで食べていた。
約半年間同じ現場で働き続けたので、小諸そばを啜り上げた回数も、汗を流したそれと同じである。つまり、文句なしの常連客であったということだ。
常連になるといっても、あくまでチェーン店だから何か人情味あふれるサービスがあったりなかったり、なかったりである。プラスの面よりも、むしろマイナス面が際立ってくるということをみなさんに紹介したいと思う。
「富士そば」「ゆで太郎」との主な違いは大盛り30円という良心的価格である。ミニ丼に蕎麦大盛りという組み合わせをなんの気なしに頼めるところが有り難い。ミニ丼+そばは500円。大盛りにしても530円だ。
また、食券制ではなく、冒頭にレジで注文と勘定を済ませてから品を受け取るスタイルである(店によって違う)。
VS小諸そば。常連のジレンマ
肉体労働であるから、それなりに腹も減る。まさか毎日ざる蕎麦一杯で引き上げていた訳ではない。
毎日毎日、「なにかしらのミニ丼+もりそば大」を注文し、受け取る時に「つけダレを少なめにして下さい」とお願いするのが通例であった。先っちょにちょっと、の江戸っ子スタイルだ。
蕎麦は食べたい、でも獣の肉でも食べながら、丼をやりたい。自然とこの組み合わせになる。半年間に渡り、私はひたすら「なにかしらのミニ丼+もりそば大」を頼み続けていた。
毎回毎回そんな調子だったので、いつもレジにいる女性店員も事情を分かっているので食い気味で勘定の文言を発してくる。注文よりも先に、勘定が飛んで来る。異様な光景だ。
いつも同じだから別に構わないのだけれど、「わかってますよお兄さん」みたいな顔をしてくるのが少し腹立たしい。
だからある日、私は『今日は気分を変えて「もりそば」ではなく「かけそば」にしよう』と試みた。夏も過ぎれば温かい汁が恋しくなるものだ。
当日、いざお昼になって小諸そばに出掛けた。レジにはいつもの女性店員が構えている。
「ミニ鶏から丼もりそば大でーす」と厨房に言いながら、その女性おばちゃん店員は「さあ支払いは1000円か600円か、お釣りは470円か、70円かお前はどっちなんだ!」という顔で、レジに手を突っ込んでまさぐっている。
悔しい。彼らの中で、俺の接客がルーティンと化している・・・。今日はかけそばなんだ。
・・・。変更じゃねーんだ。最初からかけそばなんだよ。だいたい、俺は何も口に出してなかったじゃないか、と思いながら受け取りの列に並んだ。
一難去ってまた一難である。今度は厨房の男性店員である。これもいつもの顔だ。
見事に、「ミニ鶏から丼&もりそば大」がお盆に乗っている。
やりやがったな・・・。いや、もしかしたら自分の前か後の人の分かなと思いつつも半ば諦めて、少し待ってみた。ほんの数秒の間の出来事だ。
店員と目が合う。一触即発とはまさにこのことを言う。
男性店員は“あ、そうかそうか。つけダレ少なめでしたよね”というドヤ顔で、つけダレを少し減らしてくれた。
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そして今度は“いやあ、お兄さんも通ですね”みたいな顔でこっちを見てくる。
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私は、今日も江戸ッ子さながらに、さきっちょにちょっとタレをつけてもりそばを啜った。
まとめ
・・・常連になって気まずいのは、コンビニと立ち食い蕎麦屋ぐらいのものである。