しめやかにコケ日記25日目。
「車はいい。文句も言わず走り続ける。
腹が減ってもガソリンが欲しいとは言わない。
どこが痛い、今日は気分が悪い、なんて言わない。」
「だから、人間が気づいてあげないといけないんだ。」
うちの父親はそう言って、整備士でもないのに自分の車をいじり続ける。
オイル交換もやるし、冬と春にはタイヤも替える。
下取り、買い替えが流行っても、ずっと同じ車に乗り続けている。
変わらないものに安心するのはなぜか。
終戦間際に生まれた人は、変わらないものに安心を求めるという。
機械が動かなかったら、それは作った人間のせい。
トンネルの穴掘りが進まなかったら、それは誰も掘らなかったから。
終戦後、今まで正しかったものは全て覆され、教科書には墨を塗って勉強した。
昨日まで正しかったことが、今日は違う。
人間が決めたことなんて、ルールの中で起きることなんて、そんなものである。
だから、戦後数年の世代が、簡単に揺るがないものを求めるのは当然の流れであったように思う。
Flashってなんだったの
「iPhoneはFlashが見れないからクソだ。」
発売当時、そんな声が多く聞かれた。
同時に、「Flashなんていらない」とアップル信者は言った。
「docomoの電波が一番。ソフトバンクなんて繋がりづらくてかなわん。」
あれから何年か、わざわざ数える人もいないくらい、それぐらいなんとなく状況は変わってしまった。
iPhoneがバカ売れ。たったひとつの電話にFlashは潰された。
docomoは圧倒的に優位だと思っていた電波状況を、逆に端末側から攻められて、ついに電波も覆された。
現代の日本人は鈍い
大企業だって簡単に潰れる。グーグルに支配されているネット業界は危ない。
散々言われても、現実に起きてしまっても、明日食うのに困るほどの衝撃ではないから、我々が今ある安心が永遠に続くはずはないということを実感とするのは難しい。
だから鈍くなるのは致し方無い。鈍いなりに頑張るしかない。
変化に対応出来るものだけが生き残る?
変化に対応できるものだけが生き残る。
変化に対応出来ない巨大な組織はいつか潰れる。
そうは言うけど、本当は違う気がする。
Flashも、docomoも、「機械」じゃないし、「トンネル」でもない。一時の流行の域を出るほど巨大なのものではない。
モノじゃない。コンテンツでもない。今は、体験を売る時代だ、と言われてもその体験が何なんのかよくわかっていない人間がほとんどである。
私はもちろんわかっていない。
原始的であればある程心地良い
コケは昔の植物だ。古過ぎる。
だけど、だからこそ、今でも平気で生きていける。
変化に対応しまくって、複雑なシステムを抱えて生きるのもある意味すごいが、逆のやり方もある。
コケは古過ぎるから、構造がシンプルだから、今でも進化せずにこうして生きていられる。