
By: Wolfgang Schanze
馬車が移動手段の最高峰に君臨していた時代、人々は馬糞問題で悩まされていました。
街中から、街と街を繋ぐ山道、ありとあらゆるところに馬糞が転がっている訳です。フンコロガシも追いつかない程に。
頭の良い、意識の高い人達は、どうやって馬糞を処理するか必死に考えたことでしょう。
1898年にニューヨークで開催された第1回国際都市開発会議。ここで議論されたのは、建築でも土地利用でも、経済成長でもなく、「馬糞」の問題だったというのですから驚きです。
『50年後には、街のすべての通りが3メートルの馬糞で一杯になるぞ!』とか真剣に考えていたのです。
100年前ですよ?つい最近のことです。
農家は馬糞を肥料に使おうとしたでしょう。そしたら、馬糞を回収して農家に売りつける馬糞屋が必要になります。
馬糞屋が道端の馬糞を拾って馬車に乗って牧場に届ける、なんている落語みたいな光景が繰り広げられていたに違いありません。
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自動車が馬糞を綺麗に掃除した

By: Danny VB
しかし、頭の良い、意識の高い人達の血の滲むような努力はあっという間に消し飛ぶことになります。
そう、ヘンリー・フォードさんが、発電用のエンジンを使って車の発明してしまったのです。
自動車は糞しません。
車が移動手段の中心になれば、みんなあっという間に馬糞のことなんて忘れてしまいます。
替わりに大量の水蒸気と二酸化炭素、あるいは窒素酸化物、硫黄酸化物を撒き散らかしますが。
馬糞問題を解決したのは、掃除屋でもなく、馬糞を運んで馬糞を撒き散らかす天然永久機関でもなく、技術者だったのです。
車の発明で移動時間が大幅に短縮されましたが、それ以上に馬糞問題の解消が嬉しかった人もたくさんいたんでしょうね。
イノベーションは人間ならでは
100年前の有識者たちが、現在のデータから現在の問題を解決しようとしてニッチもサッチもいかなかったところを、別な世界で生きていた技術者がするりと横からひっくり返してしまいました。
これをイノベーションと呼ぶのでしょう。
iPodやiPhoneを送り出すAppleが世界の音楽業界や携帯電話業界の地図を塗り替えてしまったことと、この馬糞問題は引き合いに出されます。
私は、CDやレコードが溢れかえることがそこまで問題だったとは思いませんが。
最近は、みんなの「なんとなく」を、「それもうやめなよ、こっちの方がいいじゃん」と無理矢理覆してしまう商売が目立つ気がします。
困っているのか、困っていないのかよくわからないうちに、次から次へとスタンダードが変わっていく。忙しいですね。
人間の脳は何か考えてないと死ぬ
単細胞生物とか、脳があまり大きくない生き物は、食べること、寝ること、子孫を残すことに一生懸命です。それ以外必要なことはないのですがから、即行動で全てが完結するのです。
人間の脳は身体を動かすための分量を遥かに超える容量を持っています。デカイです。
でも、脳は動かしていないと死んでしまうのでどんどん何かしようとします。身体を使わないと余計なことを考えるのはそのためです。
勝手に問題を作って、勝手にあれこれ考えて、自分自身を維持しているのです。
蓄音機は初め、遺言を残すためのものだった
蓄音機を作ったエジソン(最古はエドアード・レオン・ スコット氏らしいです)は、これで遺言を残そうとしてました。
でも、これって音楽鑑賞に使えるよね?と気づいた人達が後にレコードやらなんやらへと発展させていくことになります。
昔は音楽を聴くといえば生演奏しかありませんでしたが、今では録音されたものを聴くというスタイルの方が一般的です。
音楽は外で演奏家の演奏を聴く
⇨家で録音されたものを聴く
⇨外でウォークマンにカセットを入れて聴く
⇨パソコンに取り込んだ音楽を外でiPodで聴く
⇨ダウンロードして・・・
どんどん進化していますけど、演奏家は大変ですよね。自分たちの「演奏そのもの」の価値が絶えず変わっていってしまう。
こうやって人間は自分たちで勝手に問題を作って、自分たちで解決する。サイクルを繰り返しています。
肥大した脳がやっていることそのものです。
ピアノ鍵盤の並び
ピアノの鍵盤は、左側が低い音で、右側へ行くほど高い音になっていますよね。
あれと同じような神経の並びが人間の脳の中にあるそうです。
人間がやることは、どうしても自然にあるもの、脳の中にあるものに左右されるようです。
都市と地方問題

By: Allan Ajifo
これからの時代、大切なのは質問力だと言われています。
みんなは今のところなんとも思わっていない、でも解決すると世界が変わるような問題に気づく力があれば、ボロ儲けだよ、という話です。
都市と地方の問題が流行ってるらしいですね。
仮に都市は脳、地方が身体だとしましょう。
都市は、勝手に問題を作って勝手に解決を繰り返す機関、地方は、とにかく動いて脳に刺激を与える機関です。
脳は蓄音機をiPodまで持っていくことは出来るかもしれません。
でも、馬糞問題を一掃するほどではないような気がします。
脳は刺激を受けなければ死んでしまいます。
身体は絶えず外界と接して脳に刺激を与え続けます。
外界からの刺激がなければ、脳は勝手に問題を作って勝手に解決してエンドルフィンを出したりしながらよろしくやっていくのです。
そういうことなんじゃないでしょうか。
まとめ
我が家に布巾(ふきん)がない理由
全然関係ないように思われるかもしれませんが、今回の話はこの記事がきっかけで考えたことです。
ただ単にめんどくさいからフキンを使わないのか、最終的な時間短縮、効率化、幸せのためにフキンを使わないのか。
そこを自分の中ではっきりさせておくのは大切だと思います。
で、その後に、もしかしたらフキンなんて存在しない世界がやってくるかもしれない。
⇨いや、アフリカのなんとか族のみなさんはフキン使ってねーし。
⇨フキンが必要だって思っているのは先進国だけじゃね?
と、いう流れです。そう、戯言です。